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「大空、おはよう」
「おっす」
校門で、大空を見かけて挨拶をする。
その時でさえ、私は机一つ分の距離を縮められない。
手を伸ばせば、届く距離にいるのに。
「お!! 相原夫妻、そろって登校ですか~」
「もう!! 馬鹿言わないでよ!!」
「悪い~、お前からかうと面白いからな」
茶化す同級生に『もう』とため息をつく。
「ホント、小学生みたい。困るよね」
珍しく何も言わない大空を見上げると、何か考えるように私を見つめていた。
「ど……どうしたの?」
「お前なら、いつか夫婦になるのも悪くないなって……」
「なっ!! いきなり何言って……」
「いきなりじゃないけど……来年卒業するじゃん、俺ら」
「えっと……」
「だから……さ」
「……だからって、何が?」
「そう言うことだよ。ばぁか……」
大空は、私の頭をクシュクシュと撫でて歩き出す。
「言ってくれないと、分からないよ」
私は、小走りで大空の横に並び大空の手を握る。
「っ!!」
「ちょっと、身構えないでよ……。大空が言ってきたんでしょ。……私も恥ずかしいんだからね」
「お……おう」
「ちゃんと、言ってよね」
「……何が」
「え!? ほら、好き……」
ニヤリと笑った大空に、やられたっと思う。
「ご馳走様。先に、好きって聞きたかったんだ。好きだよ茜」
ギュッと、手を握り返してくれる彼の手が、緊張しているのか熱を帯びていて、私も益々意識してしまう。
3年たってようやく、二人の間から机一つ分なくなった距離を、茜色の空が見ていた……
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