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友達の恋人(その3)
修一とひろ子は同じ進学高で帰る方向も一緒である。自転車で軽快で笑い声を上げながら二人で下校してる。ちっちゃな些細な出来事でも二人には恋という名ですべてがそう楽しそうに想える。春である。桜の並木道。17歳の青春。僕の通ってる男子校も近くにあり変える方向も皮肉にも一緒である。僕はひろ子には恋心は抱かなかった。むしろ二人が羨ましかった。僕にも恋はいつ来るのであろう。自分から恋を求めなければ始まらない。非情にかつ女性が怖かった。成す術も知らなかった。ああ男女共学の高校にすれば良かったかもしれぬ。スポーツに勉強に打ち込む事もなく将来の仕事なんて考えてもいない。将来の夢さえなくただ学校に通ってるだけだ。桜が舞う花びらを僕にはただ散っているただ茫然と砂時計のように無情にも時は過ぎてゆく。僕は甲子園球児に憧れた少年は時代が懐かしくもあり今じゃ見る気もしない。もし恋が甲子園だったら僕はグラウンドに立つこともベンチに坐ることもスタンドで応援することもない。心が荒れてもいないが自分を輝かせる何かを求めるのもせずにいた。ただ僕にはひろ子の笑顔が春の陽のように眩しかった。
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