終わりのはじまり

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「あの子のこと・・・狙ってたの俺だけじゃ無かったんだなぁ・・・」 静かになった体育館で呟いた彼の言葉は、志織には届いていなかった。 「やれやれ、七瀬さんも世話がかかるなぁ」 彼はため息を一つ溢すと、また黙々とアウトサイドシュートを打ち始めた。 「あのっ!」 「なぁっ!」 「・・・・・・・・・」 二人は同時に口を開いて、同時に口を閉じた。 「なんだ?お前から先にいいぞ?」 「・・・って言っても何から話していいのか・・・」 話したいことが多すぎてまとめることができず、志織は苦笑いを見せた。 「そうか。ならこっちから」 歩みを止めて、七瀬は彼女を見つめた。 「・・・もう、忘れたのか?」 「えっ?」 「あの日、ここでお前を泣かせていた男のことだ」 風が、志織の頬を撫でた。 ─お前を泣かせる男などさっさと忘れてしまえばいい─ あの日の彼の言葉・・・。 あの日の景色が鮮明に思い出されていく。 「・・・今、忘れていたんだと思い出しました・・・」 志織は七瀬をまっすぐに見つめて、答えた。 「・・・そうか」 そんな彼女を見て、七瀬が笑う。 あの日と同じ笑顔に、志織は大事なことを思い出した。 「そうだ!!七瀬さん!!ジャージ返さなきゃ!私、あの後あのジャージを見て驚いたんです!!だって、自分の進学校なんだもん!!」     
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