終わりのはじまり

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「志織・・・。俺がお前に声を掛けたのはあの日が初めてだったけど、俺はお前が俺のことを知る前からお前を知っていたんだ」 七瀬が何かを口にするたびに、志織の胸が甘い疼きで埋め尽くされていく。 一つずつ、気付いていく・・・。 見つめてしまう・・・。 自分の気持ちを・・・。 「七瀬さ・・・ん?」 七瀬の言葉を理解したい想いと、自分の気持ちと向き合うことで、志織の頭の中がぐちゃぐちゃになる。 「休日の部活はこの道がランニングコースになる。ある日、ここで歌うお前を見つけたんだ。お前を見つけた日から休日のこのコースを走るのが楽しみになった」 七瀬の両手が、志織の肩を包み込む。 「・・・まさか、見ていたなんて・・・」 志織は、よく休日になるとこの場所でギターを弾いて歌っていた。 ここから見える夕日を見て、風にあたりながら歌うのが好きだったから。 でもまさか、その姿を彼が見ていたとは思わなかった。 「あの日、泣いているお前を見て・・・俺は気付いたら声を掛けていた。その時確信したんだ」 風が強くなってきた。 春になったと言うのにこの時間の風はまだ冷たい。 「寒くないか?」 七瀬は冷たい風から守るように、彼女を自分の胸の中に収めた。 「・・・・・・」 志織は背中に伝わる彼の体温にその身を固くした。 自分の鼓動が、耳に煩く響いている。     
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