終わりのはじまり

3/20
前へ
/20ページ
次へ
渚に、彼女はいた。 真冬だと言うのに上着は着ずに、白いパーカーとジーンズ。 長い黒髪を風に靡かせて、アコースティックギターを抱えて胡座(あぐら)をかいて座っている。 別に、ギターを奏でているわけでも、歌っているわけでもない。 ボーッと座って、海を眺めているだけ。 「・・・痛っ・・・」 急に、彼女は下腹部を抑えてうずくまった。 その頬を、涙がゆっくりと流れていく。 「無くなればいいんだ・・・」 流れる涙をそのままに、彼女は両手を首裏に回しネックレスを外した。 片割れのハートが、やけに物悲しい光を放っている。 「・・・こんなもの・・・」 外したそれを睨みつけ、よろよろと立ち上がり海に投げ棄てた。 「もう絶対・・・・・・──」 彼女の頬を、さっき以上に大粒の涙が滑っていく。 「──・・・恋なんて・・・しないんだから・・・」 寂しい呟きは一瞬だけ響いて、すぐに波音に飲まれていった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加