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ゆっくりと振り返った彼を、雲間から射し込んできた夕日が照らし出す。
オレンジ色に光る海を背に、彼は笑った。
「ありがとう、志織。やっぱり笑っていた方がいいと思う。・・・じゃあ、またな!!」
─笑っていた方がいい─
先ほど風にさらわれた言葉を残して、彼は走り去って行った。
「・・・七瀬さん・・・」
志織は彼の後ろ姿を見ながら、他の部員が呼んでいた名前を呟いた。
「・・・またって・・・」
どんどん小さくなる彼の背中を見ていたら、風が肩に掛かっていたジャージをふわりと揺らした。
「・・・どうしよう・・・これ」
返す宛はあるだろうかと、それを眺めていたら、背中に書いてあるアルファベットが目についた。
「KOYO・・・UNI・・・広陽っ!?広陽大付属の人だったの!?」
志織は我が目を疑った。
「しかもBasketballって…バスケ部だったの!?」
広陽大付属高校は、この春から彼女が進学する学校だ。
ということは、さっきまでここに居た彼は先輩と言うことになる。
「あたし・・・すごい人と話しちゃったのかも・・・」
広陽のバスケ部はこの十年間、県のトップに君臨している強豪校であり、バスケを知らない人でも一度は耳にしたことがあるくらい有名だ。
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