世界でただ一つの選挙

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「見て下さいこの貫禄。猫は普通は視線を感じると落ち着かないものですが、この堂々とした寝姿。これは市民から多数の票が入りますよ」 「これが選挙活動ですか?」 「そうです。まさにガラス張りの選挙。候補者が日替わりでここで市民にアピールするのです。この活動は撮影され、ネットでも動画で見られるんです。他の候補者の映像も見ますか?」 「お願いします」  動画を見ると愛くるしく転げ回り愛嬌を振りまく虎猫が一匹。 「こちらはとら候補者。この人なつっこさと愛想のよさが市民の心を掴んで離さないんです」 「確かに可愛いですね」  次に続くのはロシアンブルーの猫。大人しく座っているが、落ち着き無くしっぽをふり、耳をピンとたてている。 「そら候補者です。綺麗な猫でしょ。写真では人気なんですけど、ちょっと人見知りするみたいで緊張気味ですね。猫がしっぽを振るのは機嫌が悪い時なんです。これは不利です」 「しっぽを振るのは機嫌が良い時だと思ってました。」 「肉球市民はこれぐらい常識です。他の市民に比べ猫に対する愛情も知識も豊富なんです。市の木もまたたびです」  堂々と猫愛を語る山田。なるほど、市民そろって猫バカのようだ。しかしそれは微笑ましい光景であった。 「そしてこれがくろ候補者に並んで、今回の有力候補みけ候補者です」     
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