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それは恋のはじまりでした。
「じゃあねー」
「ばいばーい」
校舎の色が夕暮れに染まり、そろそろ部活も終わるのか騒がしかった放課後もだんだん静かになっていく。
もう帰った先生もいるのだろう、窓から見える駐車場にも車の数が先程よりも少なくなっていた。
――――私もそろそろ終わろうかな。
金森さくら(かなもり さくら)は、今までずっと動かしていた手をやっと止めた。
机の上には『学校をより過ごしやすくするため』というタイトルのアンケート用紙が乗っている。
それはかなりの枚数で、パッと見ただけでもこの学校の生徒全員分だろうということが分かるだろう。
先日行われたこのアンケートの集計を、金森ひとりで行っているのだ。
『アンケートをしたらいいって提案したのは会長ですよね?』
『私たち生徒会だけじゃなくて、部活もあるので頼んでいいですかぁ?』
『おおお! さっすが会長! じゃああとは宜しくお願いします』
出て行った生徒会メンバーたちの声が頭の中で甦る。
仕方がない。彼らだって彼らのやりたいことがあるのだ。自分は部活にも入っていないし、とりわけ急いで帰らなければいけない用事もない。
「もう少し、やろうかな」
きっと明日もひとりだろうから。
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