それは恋のはじまりでした。

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 金森はぎこちない笑みを浮かべ、再度手を動かそうとすると―――― 「あんた、まだやるわけ」  扉の開く音が聞こえたかと思えば低い声が教室内に響いた。  金森は驚きに肩を震わせ、扉の方を見る。そこには学ランの上のボタンを二つ開け、いわゆる腰パンをした男子生徒が立っていた。 「あの、」 「放課後になってからずっとひとりでやってるよな、あんた」  お疲れさま。  言いながら教室内に入り、金森が使う机の上に何かを置こうとする。だが、膨大なアンケート用紙に埋まった机を見て「うわ、これじゃあ何も置けねぇじゃん」と顔を歪ませた。 「多いと思ってたけど、こりゃハンパねぇわ」 「えと、すみません」 「……なんであんたが謝んの」  はぁ、と溜息をついて彼は首を折る。  その姿にまた謝れば。 「悪いのはあんたじゃなくて、」  これをあんたひとりにやらせている生徒会メンバーと、  それを知ってんのか知らねぇのか、そのままにしてる先公と、 「声を掛けるに掛けられず、こんな時間になっちまった俺、」  かなっ!  声と同時に片腕を振り、アンケート用紙を床にばらまく彼。  それを見た金森は目を見開き「なっ!」立ち上がった。 「なにするんですか!」 「ンなもん、集計結果だけあればいいだろ」  ほっとけほっとけ。     
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