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ピンポーン。
おれが葉山の目付きに怖気をふるっていると門扉で呼び鈴が鳴る。
「こんなに朝早く誰か訪ねて来る予定でも……」
葉山がおれに問い、おれが首を横に振る。
「この家に入るとき、監視カメラを見ましたが……」
再び葉山が問い、
「監視カメラはありますが、わたしには使い方がわかりません。妻任せにしていたので……」
おれがそう答えると、
「下島、頼む……」
葉山が仲間の一人を呼び、監視カメラの映像を出力させるように命じる。
「たぶん、モニターはこれでしょう」
下島と呼ばれた背の高い男がキッチンの壁に張り付く白く薄い箱を指さす。
おれはずっと気にしていなかったが、不意に記憶が蘇る。
妻に説明されたのだ。
『モニターが剥き出しでは、お客さまがいらしたときにみっともないでしょ』
と妻が蓋付きの製品を選んだことを……。
そういえば寝室にも同じ白い箱がある。
一度も使ったことはないが……。
「過去数日間の監視カメラ映像は後ほど分析させていただきます」
おれの顔を見て葉山が言う。
下島が計器をいじり、モニターに訪問客の顔が映る。
橘夫人だ。
「お知合いですか」
葉山が訊くので、
「お向かいの住人ですよ」
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