会話するなら同じ立場で。

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「家」という概念はいつから生まれたのだろう。 自分が食事し、寝て、服を来て、雨風をしのぐ場所。それを家と呼ぶのであれば家は原始時代から存在していることになる。 だが、家はただそれだけの場所ではない。 恐らく現代に暮らす人間の「家」と、原始人が暮らす「住み処」には、大きな隔たりがあるはずだ。 狩りにしろ子育てにしろ何にでも共同でことにあたった我らが祖先の感覚は、我々とは大きく違う。 俺たちが思う家は、落ち着ける場所。 どこか安心できる、居心地の良い場所。 他者の侵入を許さない場所だ。 パーソナルスペースなんて概念は近代に出てきたものだろうから、つまり家は近代の産物である。 人々が個人として尊重され、主観といったものが大切にされる。 ビバ、人権。 ビバ、我があったかハウス。 何がいいたいのかというと 「出ていけ」 「またそんなこという~」 それはそういってなにもない空中でくねくねと体をくゆらせる。 俺はきっとにらんで 「出ていけ。俺はみんなでウホウホやっていた時代の原始人じゃないんだ。自分の家をありがたがれる現代人なんだ。」 「だから?」 「だから出ていけ。ここは俺の家だ。俺の部屋だ。」 「賃貸マンションのくせに」 ぷくーと頬を膨らませる。 それからひょいっと俺に抱きついてきた。 「なっ、なにを!?」 「ね、いいでしょ?悪くはしないわよ」 「いったいなんのー」 「ほらほら」 そういって衣服をはだける。 豊満な胸がちらりとのぞく。 しかし俺の鉄の意志はゆるがない。 「出ていけ」 「もう、何が不満だっていうのよ!!」 「そりゃあお前」 そういって俺は絡み付いている腕をそのまま〈素通り〉して 「お前が幽霊だからだろうが!!」 にじりよってくるそいつをにらみ据えた。 真っ白な顔。 華奢な体。 それでもたっぷりしたところは惜しげもなく肉がついている。 整った目鼻。 そして、整うどころか存在しない両足。 ふわふわと浮かぶそいつは言った。 「ダメなの?」 「出ていけ!!」
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