1、私、男になる!

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1、私、男になる!

 春だ。 桜が散り、 新学期が始まろうとする季節。  そんなうららかな春の日に、 私は家の前で変な女性に絡まれていた。 女性はヒステリックに叫びながら、 私の肩をつかんだ。  「だからっ、 あんたが和希さんの新しい恋人なんでしょう?!」  「違います!私は隣に住んでる者で、 ママに言われてケーキを持ってきただけで」  「嘘つくんじゃないわよ!和希さんのためにあんたが作ったケーキでしょう!」  えー…この人、 全然、 私の話聞いてくれないんですけど。 さっきから押し問答で、 話が進まない。 何か勘違いされているのはわかるんだけど、 その勘違いを解こうにも相手が話を聞いていないんじゃ、 どうしようもないわ。  「とりあえず、 その…和希さんっていう人に会いませんか?お姉さん、 その人に会いにきたんですよね?」  女性は少し黙って考えていた様子だったけど、 最終的に「いいわよ!会ってやろうじゃない!」とどこまでも攻撃的な姿勢で私の提案を受け入れた。 やれやれ。  ピンポーン。  …。  ………。  インターホンは鳴ったけど、 誰も出ない。 どうやらお留守のようだ。  「誰もいないみたいですね。 それじゃ、 私はこれで」     
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