恋、リスタート

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扉を閉めて一人になった瞬間、やっと息を吐いた。 同時に、美術室特有の油の匂いが鼻に届く。 『臭い!息ができない!』 ってみんなはいうけど、私はこのツンとするような匂いが好きだった。 一歩足を踏み入れると、土まじりの風が頬をすり抜ける。 「窓、開けっ放しだ」 揺れるカーテンを押さえながら、夕暮れに染まるグラウンドに目を向けた。さっきまで入り乱れていた野球部や陸上部の声援も消えて、もう誰もいない。 窓を閉めて振り返った時、部屋の中央に設置されている石膏像と目が合った。 色のない、悲しい目をした男性の像。 ……あなたは、何を想っているの? なんて心の中で声をかけるのは、いつもの日課。 ぶんぶんと頭を振り、よし! と一人気合を入れる。 積み上げられた机を通り抜け、教室の後ろの壁の前で足を止めた。 息を吐き、息を吸う。 わかってる。わかってはいるけど、ドキドキする。
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