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亡命者
マオとパクがしばらく馬を走らせていると、遥か彼方に暗褐色の外套を着た三人連れの姿が目に入った。
刀に目がついているわけではなかったが、俺は周囲を『見る』ことができた。
見ることに関する能力は人間だったときと同じだった。
はるか遠くを見通すこともできなければ、暗闇のなかで目が効くわけでもない。
三人とも背中に旅行鞄を背負い、徒歩でこちらに向かっていた。
マオとパクの二人は、馬を停め、三人の様子を遠くから観察した。
一人は大柄な男性、二人は女性のように見えた。
確かに俺は、悪魔に魂を売っても構わないなどと罰当たりなことを考えた。
しかし、こうして犯罪者側に身を置くことは決して気持ちのいいことではなかった。
これは俺の望む『復讐』とは何の関係もない。
俺は三人連れをマオとパクの魔の手から救ってやることはできないものかと考え始めた。
三人は二〇〇メートルほどの距離に近づいていた。
フードを深くかぶっており、顔はよくわからなかったが、揃いの暗褐色の外套はマーズ連邦の『国民服』だった。
アレス共和国の隣国、マーズ連邦は、統制経済、計画経済を採用する全体主義国家だった。
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