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出発
「ふん、まあいい。仕事に戻るぞ、早く馬に乗れ」
マオは冷たい視線をパクに送ると、馬首を巡らせて、小石の転がる赤い荒野を駆けだした。
パクは慌てて馬にまたがり、マオの後を追った。
二人の遥か後方にはアルシア山、パヴォニス山、アスクレウス山からなるタルシス三山がそびえていた。
そして、パヴォニス、アスクレウス両山の後ろでは火星の最高峰である標高二十七キロの巨大なオリンポス山が圧倒的な存在感を放っていた。
風景から考えると、どうもアルギレ湖の北を隣国であるマーズ連邦との国境地帯に向けて馬を走らせているらしかった。
「パク、どっかにいいカモはいないか」
まともな奴らじゃないとは思っていたが、やはり野盗の類だった。
マオは『思念波』をサーチして襲撃対象を見つけるようパクに命じていた。
「やや右手二キロくらいのところに三人連れがいますぜ」
そんな遠い距離の『思念波』を感知できるなんて相当なものだ。
パクは、真面目に軍人をやっていれば優秀な索敵担当になれただろう。
「三人てことは、マーズ連邦軍や我が国の軍隊じゃねえな。行ってみるか」
マオは馬の向きを変えた。
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