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赤い沼の底
《殺してやる、殺してやる、殺してやる……》
俺の心の中では、明けても暮れても、どす黒い感情が渦巻いていた。
そんな俺は自由の身ではなかった。
赤く濁った沼の底で、身じろぎ一つできなかった。
最初は闇に包まれる回数で日にちを数えていたが、やがて、その作業もしなくなった。
冬が来て沼の表面に氷が張り、また、氷が解けて春になることが幾度となく繰り返された。
何年経とうが俺の心は決して変わることがなかった。
《憎い相手を惨殺するという望みが叶うなら、悪魔に魂を売っても構わない》
俺はそんなことばかり考えていた。
ある年、沼が干上がり、俺は久しぶりに親指の先ほどの大きさの太陽を拝んだ。
太陽が発する熱は弱く、暑さを感じることはなかったが、すり鉢状の沼の底は次第に乾き、ひび割れていった。
俺は冷たく乾いた風にさらされながら、周囲のぬかるみがだんだんと小さくなっていく様をぼんやりと眺めていた。
かつて沼の淵だったところには、ところどころに低木が生えていた。
そのため、あまり遠くまで周囲を見渡すことはできなかった。
おまけに乾いた風は、粒子の小さな赤い土を巻き上げて、たびたび景色を霞ませた。
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