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 柄には滑り止めのために黒い組紐を巻き付けてあり、大きめの鍔と柄頭の間には、相手の刀から持ち主の指を守るためのナックルガードがついていた。  俺も生まれた時から刀だったわけではない。  最初は人間だった。  自分で言うのもなんだが、若く、希望にあふれ、能力にも恵まれていた。  しかし刀に魂を封印され、死ぬことも生まれ変わることもできず、無為に日々を送っていた。  胡散臭い二人の男に嫌悪感を抱いていた俺は、『能力』を駆使してパクの手を払いのけようかとも考えたが、思いとどまった。  こいつらを利用すれば、少なくとも身動きできない忌々しい今の状況からは解放される。俺の願いが、ようやく叶ったのだ。 「しかし、随分地味な拵えの刀だな。おめえの言う通り上級貴族の持ち物なら、宝石の一つぐらい装飾についていてもいいはずだろ」  マオは、馬にまたがったまま、俺を握ってるパクに冷ややかな視線と言葉を送った。 「宝石はついてませんね。金銀の類も使ってねえ」  パクは締まりのない脂ぎった顔についた小さな目で、なめ回すように俺を見た。 《この刀は儀礼用ではなく実戦用だからな。上級貴族の持ち物なら何でも金銀財宝を使っていると思ったら大間違いだ》  俺は侮蔑の感情を男たちに抱いた。 「パク、ちょっと俺に貸してみろ」  馬にまたがったまま、マオは、痩せた顎を横柄にしゃくった。     
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