出発

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 俺が沼の底にいる間に世界情勢が変わっていなければ、わがアレス共和国と隣国マーズ連邦は戦争状態にあるはずだった。  もともと地球の植民地として位置づけられていた火星には国家としての主権はなかった。  それが代を重ねることによって地球からの独立を望むようになり、その過程でマーズ連邦が誕生した。  地球とマーズ連邦は独立を巡って長い間争っていたが、結局、正式には決着がつかなかった。  地球内部の国家間の戦争により地球の文明が崩壊してしまったからだ。  地球からは誰も来なくなった。  今、地球がどうなっているのかは全く分からない。  マーズ連邦は念願の独立を果たすことができたが、精密機械の製造をすべて地球に依存し、輸入に頼っていたため、地球との関係が断ち切られると、機械文明が徐々に衰退した。  『宇宙船』も『コンピュータ』も、知識として知ってはいても製造はできなかった。  かくして、火星の機械文明は地球の中世レベルに逆戻りしてしまった。  そんな中、世代を重ねた火星の人類に、多くの超能力者が誕生するようになった。  まるで、衰退した機械文明を肩代わりするように、超能力者は社会の中で活躍した。  テレパシーやテレポートは電気通信の代わりとなり、サイコキネシスは重機や遠隔操作の代わりとなった。     
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