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雨はいい。
匂いも、血も、汗も、足跡も、証拠は全て洗い流してくれる。
「ありがとう、又頼むよ」
狭い路地裏で、雨を全身で浴びながらただ立っていると、フードを被った男がそういって紙袋を渡して来た。
中を見ると、帯付きの一万円札。
取り出して中身を軽く確認すると、俺はそれをポケットに突っ込んだ。
自分の足元には、頭から血を流したまま機能停止した厳つい男。
今日も問題なく終わった。
「たしかに、では」
笑顔で答えて、その場を離れようと振り返ると、路地の出入口にもう一つの人影を見つける。
手が突っ込まれているパーカーのポケットが、不自然に膨らんでいた。
成る程、そういう事か。
「バーカ、ただで帰すわけないだろ」
後方から男の声が聞こえる。
雨音と共に聞こえる微かな服の擦れる音に反応し、すかさず銃を取り出し、前後に迷いなく発砲。
すると、銃を構えたばかりの男と、俺に銃口を向けて来た男が同時に倒れる。
「おせーよ」
ポツリと呟くと、死体を跨いで路地を抜けた。
雨はそれに合わせるように、先程よりも強く降り始めた。
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