それは、夢の国で――

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「あれ、友樹は?」  もう大学生になったというのに家族に付き合って、日曜日の遊園地に来る羽目になった瑞樹は、適当に抜け出して休んでいた。そして少し経って戻ってみると、高校二年生になっていた和樹が暇そうにベンチでポップコーンを食べているのに出くわした。 「あいつ?あいつなら、母さんと相変わらず楽しんでいるよ。もう中学生だっていうのにな。楽しくて仕方ないんだと。おかしいだろ」  くくっと笑う姿は、二人きりの時にしか見せないものだ。和樹は家族の調和というものを大事にしている。しかし、年上の兄には本来の姿を見せていいのだと決めている。 「おかしいね。おかしいのは総てさ」  瑞樹は和樹の横に座ると、勝手にポップコーンを掴んで口に放り込む。目の前に広がる、テーマパークの景色。これが当たり前だなんて、やっぱりおかしいのだ。ここには何もない。もちろん夢も。あるのは金で帰る妄想だけだ。 「兄貴はここに来るのが嫌いだもんな。小さい頃からつまらなそうだった。今は吐き気がするって顔をしている」  和樹はもっと食うかと、持っていたポップコーンのカップを差し出した。そこには大きく、このテーマパークが売りにしているキャラが描かれている。
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