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あしおと
水龍を神として祀り、水龍は王族に力をあたえ、王族は民に幸いを。
特殊な力を持つ王族。それは血に流れていて末裔まで受け継がれる。
小さな島国の豊かな生活は、水龍の加護と王族にのみもつ特殊な力で維持されている。
***
暗黒の世界の中で、ディサンテは兄の声を聞いた気がした。
『ディサンテはここを脱出しなさい。この国はもう……』
きっと夢なのだろう。
夢は曖昧で脆く消えゆく。
ディサンテとは誰のことだ? そう思うけれどそれすらも闇に飲み込まれてしまう。
しかし彼の声は暗闇の中でまた響いてきた。
『――いつの日か……に、出会えたら……この封印は解けるだろう。それまで……』
いつ? 誰に? 封印?
夢のはずなのに、そうではないような気がした。心のどこかで『本当はわかっているんだろう?』と問う自分がいる。
ふと、空気の香りと色が一気に変わり、夢が静かに沈んでいった。
この国の終わり。永遠に続くはずだった、ディサンテの故郷リリオ王国。
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