第1章 恐怖の大王

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プロローグ 2031年 東京都上空 ワープした先は、雲1つ無い空。 そこには俺と彼女しかいない。2人のそれぞれの機体、ミオソティスとホムラが軟弱であまりに頼りない俺達を極めて薄い空気から守ってくれている。 しんと静まり返り時折微かに機械音が聞こえるだけの機体内の前面に電子的に映し出された眼下には分厚い雲海が広がり、夕日の光で藍色と橙色に染め上げられている。こんな時でなかったらいつまでも見ていたい程に、壮大で綺麗な光景だ。 「準備はいい?突入するわよ!」 俺が搭乗しているミオソティスという白色の機体とは正反対の機体・・・ホムラに搭乗している凪のかけ声と共に俺達は藍色と橙色の雲海にフルスロットルで飛び込む。ぶ厚い雲を機体が切り裂き、素早く甲高い音を奏でる。 そして、雲海を抜け地表が見えてきたとき・・・そこに恐怖の大王はいた。 全長120メートル程のヒトに程近い姿をしたその生命体の背後には後光のような巨大な3対の金色の翼が備えられていて、その頭部に備えられた3つの瞳は我々に感情を伺わせない。 そして、ただひたすら前進を続ける異形の大王のその後方には、人類の放った叡知の炎の爪痕が大きく残されていた。 「本当に・・・東京が・・・!」 通信回線から凪の声が震えているのが分かる。彼女の気持ちは痛いほど分かる恐怖の大王=Traveler:アルファが現れたことにより、 明日香村のみならず、東京までもが壊滅した。 「もうこんな光景は見たくない・・・だから、ここで止める!」 もう恐怖の大王のせいで何かを失うのは我慢ならない。ここで、今度こそ確実に恐怖の大王を消し去り、平和な日常を取り戻して見せる。 「出し惜しみなんかしない!一発で終わらせる!」 主翼の上に装備された2基のキャノンにエネルギーが凝縮されていく。凝縮限界点までエネルギーが溜められた後、目を覆いたくなるほどの光を伴って、2つの光の軌跡が恐怖の大王に向かって放たれる。そして、2つの光は放たれて直ぐにその光を増して重なり、1本の光の刃となって恐怖の大王に突き刺さった・・・!
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