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2030年、とある町でー
梅雨も終わり、これから夏が始まろうとしていた頃、僕たちは、県内有数の都市に遊びに来ていた。周りが圧倒的に自然に囲まれた僕たちの出身地では、デートに適しているとは言えないため、彼女と出かける時は必然的にこの場所になる。
「ねえ!次はどこに行こうか!?」
隣で体を前屈させ、楽しげに俺の顔を覗きこんでいるのは日向ヒカリ。付き合って1年ほどになる、いわゆる彼女という存在。
肩まで伸ばした髪が、太陽に照らされ綺麗に反射する。その明るい性格と反して、見た目は端麗で男子からの人気も高い。
「もしもーし。ちゃんと聞いてるソラくん?」
そして、俺の名前は蒼井颯。ヒカリとは同じ高校に通う同級生である。
彼女の話を聞いていなかった訳ではないが、彼女と自然光が織り成す芸術美に見とれて、反応が遅れてしまった。俺は慌てて返事をする。
「ああ、悪い!色々見て少し疲れたみたいだ。どこか休めるとこないか?」
午前中から町を歩き回り買い物を楽しんだし、時計の針も12時を指している。
そろそろお昼休憩として足を休めるべき時間だ。
「うーん、確かに少し疲れたかも・・・あっ!じゃあ、あのお店がいいな!」
ヒカリはニコッと笑うと俺の手を引き、近くの若者の好むカフェに走っていく。
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