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「恐怖の大王が落ちてくるって、SINEニュースで見た? 」
SINE とは、メッセージや画像を手軽に送ったりできる便利なアプリだ
その手軽さと先進性が受け、若者を中心に人気を集めている。
「うん!見た見た!恐怖の大王が落ちてきて、この世を滅ぼすって予言だよね!」
俺はその会話を聞いて、少し耳がピクリと反応した。恐怖の大王は、1999年に社会現象を起こした予言に関わる存在だ。祖父から話は聞いていたが、2030年になった今になって、そんな話を聞くとは思わなかった。まして、それが自分より若いか同年代であろう世代が話しているなんて。
「本当に落ちてきたらどうしようね」
女子高生はそう言って笑っていた。むろん、恐怖の大王なんて存在は確認されていないし、科学の発達した現代においては到底非科学的な存在だ。
なにより、穏やかで幸せなこの時が、恐怖の大王によって壊されるなんて、そんなことはあってはならない。
「なんだか難しい顔してるよソラくん」
前に座るヒカリが僕のほっぺたを突っつきながら声をかけてきた。
「ごめん、これからの日本と世界の情勢について真摯に考えてました」
「政治のことなんて考えたことないでしょうソラくん・・・それより次はどこに行こうか?」
「うーん、ゲーセンとか?」
「せっかく初デートなんだから、もっとムードある所が良いなあ・・・それに何か記念になるものが欲しい!!」
「記念になるもの・・・熊の置物とか?」
「それ、北海道旅行の記念でしょ!・・・ペアの時計なんてどうかな?2人で過ごした時間を忘れないように!!」
ヒカリがあまりにキラキラした顔でこちらを見るので、俺はその提案を断ることはできなかった。
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