犬と猫と馬

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「猫派!」 いわれなくてもわかった。けれど、とりあえず 「へぇ、そうなんですか……そんなふうにはみえませんけど……」といってみた。 なんて根も葉もない会話だろう。(おいおいww「そんなふう」ってなんだよww)と、俺のなかの悪魔に、クククと嗤われているような気分になる。だいたい『猫派』だとか『犬派』だとか、信憑性のかけらもない派閥分けを、会話のきっかけにすること自体がバカげている。 それに、猫のなかにだって、犬みたいな猫はいるだろうし、犬になりたかった猫ぐらいいるかもしれない。もしかしたら、犬らしく生きようと、犬っぽくふるまっている猫だっていないとはかぎらない。そういう猫の身になってかんがえてみれば、『猫派』だとか『犬派』だとか、くだらないにもほどがある。そんな派閥があってたまるか!と、勝手に想像をふくらませ、悶々としつつ 「僕はどちらかといえば、犬派なんですよお」と、つけくわえた。 悪魔がまた、ククッククッと肩を小刻みにゆらす。 しかしその猫はあろうことか、恥ずかしさをのり越えた俺の発言になど、まったく興味がわかなかったといわんばかりに、そばの窓ガラスを鏡がわりにして、平然と毛繕いをしていた。会話がおわった。 (猫でたー!!) おもわず声にだしそうになった。
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