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そもそもこの程度の情報は夢の時点できちんと整理されて説明されていたわけで、むしろ起きて以降は何一つ分かっていないというのが正解である。
笑美はどこから聞こえているかも定かでない声に向かってぶんぶんと指を振って抗議するが声の主は意にも介さず、公園にいた子供のいらん注目を浴びるだけだった。
「まあ、大変なのはわかった、わからんけどわかったことにしといたる。でもな、夢でも言うたけど、ウチただの高校生や。アンタらの世界を救う? って漫画みたいな話、ちょっとその、受け止めきれへんねん」
<<おっ? 自分漫画とか読むん?>>
「急な友達ノリやめぇや!! まあ読むけども! 今そんな話しとらんやろ!」
笑美はもはや肩で息をしている。ツッコミの消費カロリーがお昼ご飯を超え始めている。せめてコンビニにカツサンドが残っていれば、と悔やまれてならない。
「で! どうしたら諦めてくれるんかなぁ!?」
<<……あと一息なのだ>>
「一息……? 何が」
<<すまない……>>
謎の声のトーンが、低くなる。
それは日中の(なぜか関西弁になる)ボケ倒している声とも、先程からの紳士的な声とも違う、固い決意と真剣な謝意を含んだものだった。
「すまないって……まさかアンタ、強引に」
「あーっ!」
突然上がる声に笑美は思わず立ち上がる。
その声は幻聴ではない、現実のものだった。
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