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声の方向を探すと、さっきまで公園で遊んでいた子供の一人が、公園の出口に向けて走っている。どうやら意図せぬ勢いで転がってしまったボールを追っているようだ。しかしボールの勢いは強い。
車止めをすりぬけ、ボールはそのまま車道へと転がり出す。
子供は同じコースでそれを追う。
笑美は弾かれたように走り出す。
視界の端に、猛スピードで走りくるトラックが見えていた。
「クッソがぁ!!」
ツッコミで鍛えられるのは主に喋りと腕だが、笑美は脚にも自信がある。
「止まりぃー!!」
しかしボールは無情にもトラックの前、笑美の声も子供の足も止めるには至らない。彼女の足でも、余裕を持って追いつくにはベンチから公園の出口は少しだけ離れすぎていた。
「てりゃーーーー!!!!!」
あとトラックまで10メートル、子供まで2メートル。ここから引っ張り戻すのは勢いがつきすぎていて間に合わない。
笑美はそのまま地面を蹴って、トラックの正面にいる子供の背を押す。
響き渡る不快で恐ろしいブレーキ音。
突き飛ばされる子供、代わりにトラックの前に投げ出される笑美。そのまま地面に倒れ込む笑美にトラックが迫る。
「ああ……今晩、クラブハウスサンドマンの新ネタやるはずやったのになぁ……」
そして、訪れる静寂。
トラックは笑美の眼前、1メートルくらいの位置でギリギリ止まっていた。
「え?」
<<いやー、無事で何よりやでホンマ>>
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