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「なるほど、疑問はもっともですね。ここは一応軍隊なわけですから。いえ、私は元々軍人ではなく文官ですからね。一応司令官という形ではありますが……つい最近までこの部隊が動くとは誰も思っていなかったので、お飾りのようなものです」
「お飾り……」
「まあ私の事はいいでしょう。どうぞ、あなたの事を聞かせてください、都島さん。アパシーと戦った以上、貴方が人類の敵ではないと信じていますが……何も知らない相手を信じきれるほど、お人好しではありませんので」
ギラリ、とノボウスの眼の奥が光ったように見え、笑美は背筋に冷ややかなものを感じた。なかなかどうして、責任を背負っただけの事はある人物なのだろう。
「わかりました、せやったらまあ、順を追って分かる範囲で……」
それから笑美はぽつぽつと、どこから話していいのか、何を話して何を話さなくていいのかもわからないので、もう一番頭の夢の話から全部していった。
キクジマとノボウスは嘲笑うでも問い詰めるでもなく、ただただそれを聞き、時折手元でなにかメモをとって、また聞き続けた。
話の時系列が今ここ、この作戦室に到達すると、ようやくひとつ大きな息をついて笑美は手元にある甘いコーヒーを飲み干した。そう言えば、自分らしくもなく特に笑いを取りもせずに淡々と話してしまった、と笑美はその後で気づいた。
「なるほど……異世界、いや、別位相からの来訪者というわけですか」
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