第三話「遭遇! 残念部隊」

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「あれは『眼』『耳』『口』を捨てているという意思表示なのだと、絶笑戦争の記録には残っています。こちらのことを見ない、こちらの言うことは聞かない、こちらに何かを伝えることはない。コンタクトを全て拒否しているのだそうです。鼻だけはおそらく『狩り』のために残しているのでしょう。ただ口もありませんから捕食もしない。ただ人類を滅ぼすための装置のように見える。だから『無情』なのです」 「あ、はい、さいですか……」  淡々と語るノボウスに笑美は曖昧な相槌を返すことしか出来ない。というか、あまりにツッコミどころのない説明に、聞き入る以外に何もすることがないのだ。 「ともかく、人類の存在を脅かし、決して意思の疎通が出来ない相手だとお考え下さい。さて、そのアパシーと戦うため、人類が生み出したものが『他位相観測装置』通称『フェーズスコープ』です。これはこの世界と共通性のある別の位相にある世界を観測することの出来る装置で」 「ちょ、ちょっと待ってな。もうちょっとわかりやすく」  笑美がなんとか食い下がる。ここをきちんと噛み砕かねば誰にも伝わるまいという強い意思を感じる。とても有り難いことである。 「そうですね。別の世界を覗き見る、というのはわかりますか」 「まあ、なんとか」 「他位相というのは、厳密には別の世界ではないのです。例えば我々と全く違う進化をたどった生物のいる世界を観測できても参考にならないでしょう?」 「なるほど、恐竜人間とかいたとしてもうちら人間と同じには考えられへんよね。体温調節から違うわけやし、何が狂うかわからんと」     
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