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「どこで開催されとんのやろなぁ……」
ブツブツと言いながらすこしクセのある髪の毛を櫛でとかしては引っ張り、お気に入りの髪留めで2つにまとめていく。友人からは洗濯バサミと大好評の大きめのクリップのようなそれは笑美のトレードマークとしてすっかりお馴染みだ。
「んー……でもパチモンなんバレるとアレやし……買い直すべきやろうか……いや、先にそういうのをやるような友達が……」
ぶつくさ言いながら洗面所を後にする笑美。彼女は決して友人が少ないわけではないのだが、年頃の女の子がしているという甘酸っぱいトークイベントに参加する機会は皆無だった。
『クラスのアイドル』だとか『学年のマドンナ』だとか、『ミス・うちの高校』みたいなものに憧れるわけではないけれど、せめて男子にキャーキャー言われたり女子っぽいトークに花を咲かせたりしてもバチは当たらないのではないかと思いながら、リビングのソファに腰を下ろす。
「いや、マドンナて古いな……」
自分の思考にツッコミながら、テレビのリモコンを操作して、ハードディスクに録画されている番組を選ぶ。
変な夢のおかげでずいぶんと早く起きてしまった。
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