第一話「転臨! ツッコミ(美)少女」

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 キッチンからは包丁の音が聞こえてはいるが、母親が朝食を用意してくれるまでもうしばらく時間がかかりそうだ。 「よ、っと」  深夜に放送していたお笑いネタ番組を再生すると、一度大きなあくびをしてから画面に見入った。 「女やったんかい!」 「じゃあなんで今『任せて下さい』って言うたんや!」 「電話せぇへんのかい!」  画面のネタに合わせて、笑美の口からはぽんぽんとツッコミが飛び出す。  初めて見るネタだったが、そのほとんどは画面の中のコメディアンのツッコミとほぼシンクロする。  違った場合はたいてい、笑美のツッコミの方がよりキレがある。  別にトレーニングとかそういうアレではない。単にクセでツッコんでしまうのだ。 『学園のマドンナ』の代わりに彼女についているあだ名は「小原高のツッコミモンスター」  都島笑美、16歳。好きなものはお笑いと魚介豚骨のラーメン。 「笑美ー、そろそろご飯できるでー」 「あと5分で終わるからちょっと待ってぇなー」   まだ恋は遠いツッコミ少女の波乱の物語は、こんな普通の朝から始まった。
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