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サバサバした性格で、レッスン生からの人気の高い室田は、奏多にとってもいい先生だ。個性を尊重したレッスン方針が好きで、高校三年間はずっと室田のレッスンを受けていた。
長い間レッスンも受けていないので、たまには第三者からのアドバイスを受けたくなる。それでも、今の演奏はできれば誰にも聞かせたくない。おまけに、ここでの立ち話は危険だ。
「ごめん、先生。俺、練習があるから」
話を切り上げて、早く練習室に入りたかった。ここに居ては、慶一が来てしまうかもしれない。
「待って待って、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
背を向けて歩きだそうとした奏多を、室田が慌てて引き止めた。
「ねえ。慶一と最近仲よかったよね。なにか聞いてない?」
「……なにかって」
慶一の名前が出たことに過剰に跳ねそうになる肩をなんとか堪えた。それより、当然のように慶一を呼び捨てにしていることに、驚いた。
そういえば、はじめてのデートの時だが個人的に連絡が取れるほど、音楽教室の先生と懇意にしているようだった。室田とも親しいのだろうか。
だが、そんな事今更知りたくもない。できるだけ平静な声を作って、奏多は答えた。
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