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 青木家は、豆腐屋と併設しているとは思えないほど近代的な一軒家だ。  三年前に姉夫婦が一緒に住むと決め、そろそろ両親の将来も考えバリアフリー化を進めた方がいいだろうということから、全面改築を行ったのだ。  そんな青木家の中で、唯一残っている和室が奏多の部屋だ。ずっと和室で生活していた奏多にとって、自分の部屋がフローリングになるなんて想像もできなかった。どうしても和室がいいとゴネた結果、一部屋だけ和室を残すことになった。ただ、畳二枚分だけはフローリングで補強し、その位置に相棒のピアノが置かれている。  青木豆腐店は三代続くこの辺りでは有名な老舗豆腐店だ。だが両親は、奏多と姉の志織が幼い頃から、豆腐屋は自分たちの代で閉めると決めていた。  年々売上は減るのに対し原価は上がり、商店街への客足も遠のいている昨今、生活と経営両方の過酷さを十分に理解していた両親は、子ども達には好きな職を選んで欲しいと考えていた。     
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