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子ども達に店は継がせないと考えていた両親には悪いが、姉の決断は奏多にとっては嬉しかった。生まれ育った豆腐屋に愛着があり、閉めたくないと思っていたのは奏多も同じだった。それでも、自分から店を継ぎたいとは言えず、当時はピアノの道に進む将来も考えていた。だからこそ、姉が店を存続すると言ってくれたときは嬉しかった。
そんな奏多の自室に、馬鹿でかい笑い声が響いた。
「だーはっはっは。なんだそれ、ネタか?」
「ネタじゃねーよ! リアルな珍事件だ」
腹を抱えて笑う幼馴染を睨み、奏多は唸った。遠慮なく大声で笑う幼馴染、平塚信也のせいで、さっきから何度も「うるせえ」と店から父親が怒鳴っている。だが、謝っては笑い、謝っては笑いの繰り返しで、ついに父も諦め、和室には遠慮のない信也の笑い声が響き渡る。
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