序章一

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孤独に目覚める夜がある。 夢の中でも夢から醒めても、変わらず心を苛んでくる、堪えきれないほどの孤独感。 世界から切り離されてしまった自分は、闇の中で五体は霧消するように失われ、魂は漆黒に染め上げられてしまうのではないかという絶望に陥ってしまいそうになる。 そんな時は、暗闇に全てが真っ黒く塗り潰される前に、スマートフォンを手に取り画面の明かりを点けて、常に立ち上げたままにしてあるチャットアプリから『hinano』のトークルームを開く。 そしてたった二文字、入力するだけでいい。 ――ひな それだけで、身悶えしたくなるような寂しさから、心が解放されるのだ。
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