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和希 一
「カズキ!」
毎朝、日常の風景。通勤通学のために駅へと向かう、たくさんの人々。
忙しそうに歩く足々に混じってヒールの音も高らかに、急ぎ足で近寄ってくる靴音から声があがった。
よく通るその声に周りが振り向いたが、呼ばれた本人は少しも構わずそのまま歩いて行く。
「ちょっと待ってよ! カズキったら!」
待つ気はないし、ついてきて欲しくもない和希は、歩く速度を速めた。けれど声の主は、その背中にさらに言葉を浴びせてくる。
「駅まで行くんでしょ!? サラもだから、一緒に行こうよ!」
そう言いながら走って追いついてくると、沙羅は和希の隣に並んで歩きながら尚、言い募ってきた。
「今日はバイト、昼からでしょ? なのにこんな朝っぱらから、どこ行くのよ」
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