和希 一

2/15
前へ
/208ページ
次へ
問われた和希がため息をついて立ち止まり、ちらりと視線を向けると沙羅はひたむきな気持ちを隠すことなく、まっすぐに瞳を返してきた。 大学生になったからと染めた明るめの茶髪が、彼女の華やかな顔立ちをさらに際立たせながら、さらりと風になびく。 たった数ヶ月で化粧も服装もあか抜けて、ますます美人に拍車がかかったな。なのに何で、お前は今でも俺を見上げているんだ。 ここのところ特に、沙羅と向き合うことを避けてきた和希には、彼女のそんな姿がひどく眩しく見えた。けれどその瞳の中に、変わることなく未だ存在するのであろう想いに気がつくと、何とも言えない戸惑いを覚える。 こんな自分になっていなければおそらく安堵したであろう、その想い。 けど俺は変わった。変わったんだよ、沙羅。だからお前ももう、俺に固執するのはやめろ。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加