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問われた和希がため息をついて立ち止まり、ちらりと視線を向けると沙羅はひたむきな気持ちを隠すことなく、まっすぐに瞳を返してきた。
大学生になったからと染めた明るめの茶髪が、彼女の華やかな顔立ちをさらに際立たせながら、さらりと風になびく。
たった数ヶ月で化粧も服装もあか抜けて、ますます美人に拍車がかかったな。なのに何で、お前は今でも俺を見上げているんだ。
ここのところ特に、沙羅と向き合うことを避けてきた和希には、彼女のそんな姿がひどく眩しく見えた。けれどその瞳の中に、変わることなく未だ存在するのであろう想いに気がつくと、何とも言えない戸惑いを覚える。
こんな自分になっていなければおそらく安堵したであろう、その想い。
けど俺は変わった。変わったんだよ、沙羅。だからお前ももう、俺に固執するのはやめろ。
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