和希 一

3/15
前へ
/208ページ
次へ
「俺がいつどこで何をしようが、サラには関係ないだろ。人の世話なんか焼いてないで、お前は大学行けよ。授業あるだろ」 あえて突き放すような言い方をして、沙羅が怯むのを確認すると、和希は再び歩き出した。 ところがしばらく歩いていると、小走りしながら近づいてきた沙羅が、和希の後ろを今度は黙ってついてくる。 和希が立ち止まると、沙羅も止まる。和希は振り返り、今度は真正面から沙羅を見据えると、彼女は瞳を逸らせてうつむいた。 全く、何でコイツは…… 沙羅の想いを和希は知っている。それに救われたこともあるし、何かあればそれを支えにしてきた自分がいることも、自覚はしていた。 本気でそれに応えるつもりはないくせに。 堪えがたい寂しさを紛らわす時にしか、相手にしないくせに。 そんな関係には先がないし、もうすでに行き詰まりつつあると和希は感じていた。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加