第2章 意外な異動

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 本署に着くと課長が席にいた。内藤先輩は「ハゲ」とディスっていたが、実はその通りだ。ハゲ頭に牛乳瓶の底のような眼鏡。今すぐにでも「ちょっとだけよ~ん?」と言いそな雰囲気があった。それはともかく、課長の席まで向かい訊ねた。 俺「課長、お呼びでしょうか?。」 地域課長「悪いねぇ、仕事中に。実は本部の警務部からこれが来た。お前異動だ。」 俺「異動ですか!?どこにです?まさか機動隊ですか?」 地域課長「君はいい身体してるからねぇ。それなら納得だが、意外だなぁ。お前がここに行くなんて。ほい、これ。」 俺は課長から辞令を受け取った。総務か?それとも交通課で駐禁取り締まりか? 辞令にはこう書いてあった。 「辞令 配置転換 O県警巡査 山居直樹 1日付を持ち現所属から、県警本部地域部自動車警ら隊への異動を命ずる。以上。」 驚愕だ。言葉が見つからない。俺は課長に言った。 俺「課長、これは何かの間違いなのではないでしょか?」 地域課長「俺もそう思って警務課長に聞いたんだ。本部は間違えて送ったんじゃないかってねぇ。だけど、間違いないっていうんだ。」 俺「ですが、自分は・・・。その・・・。」 俺が言葉を失うのは当然だ。最も自分に合ってないのだから。 地域部自動車警ら隊。通称”ジラ隊”。地域部の中でも検挙率は群を抜いて高い。2人1組でパトカーに乗務し街を流し、事件があれば真っ先に現場に向かう。中でもジラ隊の人間の能力で突出しているのが職務質問だ。わずかな異変で犯罪をあぶりだし追い詰め逮捕する。まさにエリート揃いである。  なぜ俺がジラ隊が合わないかというと職務質問が下手くそだからだ。警察学校の実技成績は下から数えたほうが早く、交番勤務でも職務質問をうまくできず結局先輩に代わってもらう。俺はそういう奴だ。課長もそれは知っている。 地域課長「君、職質下手だもんねぇ。」 「こいつ、ストレートに言いやがった。」そう、心の中で呟いた。 地域課長「まぁ、人事だから。整理と後任への引継ぎをやっといて。おっと、課長会議の時間だ。じゃぁ頑張ってねぇ。」 と去っていた。 「マジかよ。なんで俺なんかが・・・。」そう複雑な思いを抱えながら交番に戻った。
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