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スズキという男の日常
「坊ちゃん、今日もお出掛けですか?少しお待ちを、料理の仕込みが終わったら私もお伴します」
「必要ないぞ、クラシナ。というかついてくるんじゃない!
吾輩は孤独と冷徹な視線光る探偵ぞ。邪魔をするでない」
そう、道に会話が響いたと思うといつぞやの自称探偵が今度はプロペラの取り付けられた安楽椅子でホバリングしながら文字通りに飛び出してきた。ジンベエザメもかくやと言うほどに俺はあんぐりと口を開け、彼を見送る。
「いや、見なかった事にしよう。どうも今日は調子が悪いようだ、さっさと家に帰ろう……」
だがしかし、悲しいかな世で探偵が外に出ると言うことはすなわち事件の発生を意味する。頭脳が大人な小学生でも、推理力ゼロのエセ探偵でもそこだけは共通なようで彼らは事件の数には困らない。
問題なのはそこに俺が巻き込まれてしまったことだ。
「またお前か?ヒガシ、だが安心しろ今回吾輩はキサマを犯人と疑ってはいない」
……そりゃあ、そうだ。初めに事件の被害者から疑い始める探偵は廃業モノだろう。
「いいか、取り敢えず初めから事件を振り返ろうではないか。
そうあれは吾輩がヘリ型安楽椅子で街の見回りをしていた時に起こった。
…スズキ君」
「はい」
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