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ゆっくりと瞼を開ける、どうやら少し眠っていたらしい。大きく伸びをして、ベッドから起き上がった。ずるっとかけてあった布団が落ち、素肌をくすぐった。俺の隣で同じように横になっていたはず美沙子さんは、すでに部屋着に着替えて、台所でコーヒーと淹れ直していた。そっと忍び寄り、背中から美沙子さんを抱きしめる。
「なんで服着ちゃってるの?」
「だって……」
「恥ずかしい?」
美沙子さんは、コクンと頷く。その仕草も可愛くって、頬にキスをすると美沙子さんはくすぐったそうに首をすくめた。
「あ、あのね、瀬戸くん」
俺の名を呼ぶ美沙子さんの声は、上ずっていて大分堅苦しい。
「なに?」
「あの……その、あのね」
随分と歯切れが悪い。腕に力を少しだけ込めて、促すように体を小さく揺らした。
「もしかして、痛かった?」
「あの、そう言う訳じゃないの! ……これ」
美沙子さんは俺の腕の中で振り返り、スウェットのポケットからサンタクロースのマスコットがついた……鍵を取り出した。
「これ、もしかして……?」
「そう、うちの鍵」
「美沙子さんちの合鍵ってこと?」
聞き返すと、美沙子さんは恥ずかしそうに俯く。
「ちょっと早いけど、クリスマスプレゼント。合鍵持ってたら、今日みたいに外で待ってなくてもいいでしょう?」
「いいの? 俺、勝手に入って美沙子さんの事待ってるかもよ?」
「うん、いいの。だって……」
美沙子さんは、一度大きく深呼吸をした。
「瀬戸くん、私の……か、彼氏だもん」
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