章タイトル無し

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 うっとうしい《同居人》にガソリンを浴びせ、点火したライターを投げつけてやった。  ざまぁみろ!  ところが、《同居人》は、燃え上がりながら、この俺に抱き着いて来た。  やめろ! 離れろ!  《同居人》とともに俺も炎に包まれた。  駄目だ、もう……。    河川敷で発見された焼死体について説明したい、とある人物が警察署を訪れていた。  「私は《彼ら》を知っています――」  彼は言った。  「《彼ら》?」  警察署長が訊ねた。  「もっとも凶暴な《同居人》がただ一つの肉体を独占する為、本来の主を殺そうとした結果なんです」  「どういうことでしょうか?」  「亡くなったのは解離性同一性障害の発症者。俗に、多重人格、と呼ばれる症状を示していた患者さんです」と彼は説明した。「私は《彼ら》の主治医。大学病院に勤める精神科医です」                                      〈了〉
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