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バスルームで、私は折り畳み式のお風呂の蓋を滑り台に見立てて、バスタブの中に立て掛ける。
「う~ん、ちょっと無理があるかな」
サツキに、タマちゃんが乗ったのと似ている滑り台があると言った手前、なんとか実現しないといけないのだが、不安になってきた。
お風呂の扉の前でサツキのママ~という声がする。これ以上、サツキをひとりにしておけない。
扉を開くと服を脱いで裸になったサツキが立っている。
湯船をはったバスタブを見て、顔が歪んでいる。
「ママ、サツキ、お風呂入るの怖い」
サツキが泣き出した。
「サツキ、ほら、これに乗ったら、タマちゃんと同じ滑り台だよ」
サツキはまだ泣いている。「やだ~やだ~」
「ほら見て、サツキ」
私は部屋着のままバスタブに入り、立てかけた蓋の上に座り、無理矢理滑り降りる。
ズルっと滑ってバスタブにバシャーンと入り、お湯がバスタブから溢れる。
服のまま、頭からお湯をかぶった私。
「うわー、ビショビショだあ。でも気持ちいい。あったか~い。サツキもおいでよ」
泣いていたサツキがキョトーンとした顔で私を見たあと、ニヤニヤし始めた。
「ママ、河童だね。河童のルウだね」
お湯をかぶって濡れた髪をひと振りしたときの私の髪型が、サツキの大好きな絵本「河童のルウ」のルウに見えたのだ。
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