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 両親が離婚した後、私は生きることに対する情熱みたいなものを失っていた気がする。だから第一志望の大学に落ちたのも当然なのよ。浪人なんて出来るはずもないし、合格していた滑り止めの短大に進学したの。その時に司書になる夢は諦めた。あの時の私は、夢を追うより今を生きるのに精一杯だったから。早く就職してママを助けなきゃ。その一心だったの。  でもね、歳を重ねる度に思うようになった。私何やってるんだろう、って。夢を諦めて適当に進学して適当に就職して、そこで出会った人とダラダラ付き合って…私の人生、何なんだろうって。そんな時に、プロポーズされたの。でも今の私のまま結婚してもいいのか、自信がなかった。だからちょっと待ってて言ったのに…前に話した通り。もう生きてても仕方ないなって思って、死のうとした。千代に「ここに来た時と同じ事は出来ない」って言ったのは、これが理由。お酒で睡眠薬飲むなんて、18歳の自分の前で出来るわけないでしょ。  ちーちゃんは、苦笑いを浮かべていた。 「じゃあ、ちーちゃんがここに来た理由は?」 「死ぬ前にやり直したかったのかもね。私、人生の分岐点は2つあったって、ずっと思ってた。愁君の鼻血事件と両親の離婚」 「…」 「離婚はね、止められなくてもいいの。それよりも、それがきっかけで人生に対して情熱を持てなくなったことに後悔し続けてた。だから、もう一度人生をやり直せるならそこから始めたいって思ってたの」 だからここに来たんだろうね、と彼女は言った。私は溢れ出る涙を止めることが出来なかった。
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