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「じゃあ、図書館司書にはなれてない…?」
「もちろん」
嘘。夢を叶えられなかったんだ、私。ショックで涙が出そうだった。
「そんな顔しないでよ」
「何で司書になれなかったの?」
「何でって…言ったでしょ。大学受験に失敗したから、資格が取れなかったのよ」
「そんな…」
それに、と大人の私は悲しそうに続けた。
「あと少ししたらわかると思うけど、あんたが今思ってるほど、人生に情熱を持てなくなったの」
投げやりな言い方だったけれど、その声には後悔が滲んでいる。この人は私なのだから、それがわかる。きっと、そう言うしかない何か他の理由があるんだ。
「どうして?」
聞き返しても、彼女は答えなかった。
なんだか落ち込む。聞けば聞くほど、私の人生は最悪なのだと知ることになる。これ以上知りたくない。
気付けば両親の喧嘩はヒートアップしていた。リビングから聞こえる怒鳴り声は大きくなるばかりだ。最近は毎日こう。こういう時、私は家をこっそり抜け出して近くの公園へ逃げる。今夜もそうしよう。そう思った時、「公園、行く?」と大人の私に言われた。
「こういう時は、公園に行くしかないでしょ」
「付いてくるつもり?」
「もちろん」
「もう帰りなよ!これ以上いられても、迷惑なんですけど」
「そう言われても」
一人になりたかった。この人がいると、私が惨めに思えてくる。
「早く帰って!」
怒りに任せて立ち上がる私とは対照的に、彼女は淡々としていた。
「帰るって、どうやって?」
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