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 結局、二人で家から5分ほどの公園へ行くことにした。  並んでブランコに腰掛けながらただ闇を見つめていた。春とはいえ、夜はまだ肌寒い。 「ちーちゃんって呼んでいい?」 「お好きにどうぞ。私はあなたなんだから」 ちーちゃんとは、私のあだ名だ。友人は私をそう呼ぶ。 「離婚するんだろうね、パパとママ」 ちーちゃんは、何も言わなかった。代わりに、「聞きたいこと、ないの?」と言った。私は少し考えて、振られた彼氏はどんな人?と聞いた。 「男前だったよ。愁君よりは、かっこいいかな」 愁君、とは今の私の好きな人だ。  「愁君よりかっこいい人なんているの」 「いるのよ、それが。大人になれば、出逢いは山ほどあるからね」 「そうなんだ」 それはちょっと楽しみだ。 「だけど、男前といい男は違う。彼氏は男前だけど悪い男だった」 ギシギシとブランコを揺らしながら、ちーちゃんは続けた。 「結婚しようって言われたの。だけど正直、あの人と人生を共にすることを想像できなかった。だからあと少し待ってほしいって言った。気持ちの整理する時間をちょうだいって」 静かなちーちゃんの声は、どこまでも深く闇に溶けていく。 「そしたら浮気されたの。私の後輩と浮気したうえ、子供が出来たって言われた」 ギシギシと言う音が大きくなったと思ったら、ちーちゃんの背中は夜空に浮かんでいた。ブランコが、大きく揺れる。 「どうせ結婚してくれないんだから、俺がどこで誰と子供作ろうが勝手だろって言われて振られた。馬鹿みたいよね、私。あの時、結婚しようって言われた時、黙って受け入れていれば良かったのよ、きっと。そしたらこんな悲しい思いしなくてすんだ」 ちーちゃんの声は震えていた。
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