空き地のすみ

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吾輩が来たのは街灯でかろうじて全体が見渡せそうなくらいのせまくて暗い空き地だった。ゆっくり歩いてきたせいか夜風に身体が冷えてしまったようで、吾輩は身震いした。 しかしここなら、吾輩を撫でて温めてくれる親切な人がいる。積まれた土管の中か、その奥か。 吾輩がひと鳴きすると土管の裏からのそ、っと影が動いた。 「おぅ、今日も来たのか。今日は収穫だ、食え食え。」 ぼろぼろで埃だらけの服を着た男がパンの耳を差し出す。吾輩には今、ごはんを押し付ける恩着せがましい人が欲しいのではない。吾輩はパンの耳には目もくれずぼろぼろの男の手に頭をこすりつける。 男は少し不服そうにそのパンの耳をひょいと口に入れると、吾輩を優しく撫でながら身の上話を始めた。 吾輩はその男の話を聞いているような素振りで頭を、身体を撫でてもらいゴロゴロと喉を鳴らす。もちろん吾輩は話など聞いていない。 気持ちがよくなってきたのでこのままこの男の横で眠りにつこう。みなさん、おやすみなさい。
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