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東京から実家の最寄り駅へと向かう赤い電車。
車窓からは、学生の頃と変わらぬ風景が広がっていた。
両親から、私が小学校から大学まで暮らした賃貸マンションを引っ越すと告げられたのは、つい1ヶ月前のことだった。
「経済的に困窮し、家賃の安い県営住宅に移る必要がある」という引越しの理由。
なかなか物悲しいが、社会人3年目の手取りでは、どうしてやることもできない。
大学生の頃、父親の会社が倒産して以来、家計は一気に火の車となった。
両親の仲も悪くなり、息子に心配をかけまいと、仲良さそうに繕う二人を見るのが嫌で、実家に帰るのを躊躇うようになっていた。
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