チビと旦那

1/6
前へ
/6ページ
次へ

チビと旦那

 結婚してから三度目の帰省。  玄関を開けると真っ先に出迎えてくれるのがチビだ。  その名前が似合わないほどに大きくなった三毛猫は、私のところへまっしぐらに駆けて来る。  しかし、その足は私の腕に飛び込む前にピタリと止まった。  明らかな警戒モード。  警戒対象は、私の後ろで荷物を抱えて立っているでっかい旦那だ。 「やあチビ」  私と比べて遥かに大きい旦那は、強面の顔に下手な笑顔を浮かべながらチビに挨拶をした。しかし、チビはそれに応えない。数歩後ずさって踵を返し、そのまま家の奥へ走り去ってしまった。旦那は落胆のため息と供に肩を落とす。もうお馴染みになりつつある光景。  旦那は猫が大好きなのだ。  私の実家に猫がいると知った時の喜びようときたら……。  しかし、今日まで抱っこはおろか、満足に触らせてすら貰えない。  原因は彼の方にあって、要するに無造作に距離を詰めすぎたんだな。 「今回こそ、抱っこしてやる」  旦那の決心に水を差す気はないが、まずは撫でることを目標にしてはどうかと私は思う。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加