チビと旦那

2/6
前へ
/6ページ
次へ
 ともかくこうして今回もまた、旦那の涙ぐましい愉快な戦いが幕を開けた。  通りすがりのチビを撫でようとすれば、体を器用に捻ったチビにその手を避けられ、煮干しで釣ろうとすれば、一瞥も貰えずに無視される。これまで以上に、あの手この手でチビを籠絡しようと試みるが、全ては失敗に終わった。 「構い過ぎだと思うよ」 「いや、もう少しで打ち解けられるんだ」  結婚前から気になってたんだ。  その謎の前向き思考はどこから来るわけ?  案の定、とうとうチビは旦那の前に姿を見せなくなった。  打つ手が無くなった旦那が私に縋ってくる。 「もう、どうすればいいのか」 「構い過ぎだって言ったでしょ」 「うう……」  大きな体を縮こまらせて項垂れる旦那。  原因が旦那にあるとはいえ、さすがに見ていて可哀想になってきた。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加