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チビと旦那
結婚してから三度目の帰省。
玄関を開けると真っ先に出迎えてくれるのがチビだ。
その名前が似合わないほどに大きくなった三毛猫は、私のところへまっしぐらに駆けて来る。
しかし、その足は私の腕に飛び込む前にピタリと止まった。
明らかな警戒モード。
警戒対象は、私の後ろで荷物を抱えて立っているでっかい旦那だ。
「やあチビ」
私と比べて遥かに大きい旦那は、強面の顔に下手な笑顔を浮かべながらチビに挨拶をした。しかし、チビはそれに応えない。数歩後ずさって踵を返し、そのまま家の奥へ走り去ってしまった。旦那は落胆のため息と供に肩を落とす。もうお馴染みになりつつある光景。
旦那は猫が大好きなのだ。
私の実家に猫がいると知った時の喜びようときたら……。
しかし、今日まで抱っこはおろか、満足に触らせてすら貰えない。
原因は彼の方にあって、要するに無造作に距離を詰めすぎたんだな。
「今回こそ、抱っこしてやる」
旦那の決心に水を差す気はないが、まずは撫でることを目標にしてはどうかと私は思う。
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